おすすめ最新記事_Blog

仕事に役立つ心理学

冠動脈吻合(ふんごう)技術競技会~NHK「ニッポン知らなかった選手権 実況中!より」

pixta_30813944_L
日本には、企業や業界団体内で開催されている、様々なスキルアップのコンテストが存在し、そうした大会の様子をカメラで捉え、プロならではの様々な技術、それを用いた戦いの現場を実況するという、とても興味深いTV番組を見ました。

ニッポン知らなかった選手権 実況中! こんな大会があったのか(NHK) です。
番組公式サイト

冠動脈吻合(ふんごう)技術競技会

先日放映されたのは
日本冠動脈外科学会主催の、第2回 冠動脈吻合(ふんごう)技術競技会
でした。
日本冠動脈外科学会競技会サイト

日本人の死因の上位を占める心筋梗塞。
この治療として行われる冠動脈バイパス手術の技術の向上を目指した、心臓外科医たちによる競技会、それが冠動脈吻合(ふんごう)技術競技会です。
シリコン製・直径2mmの模擬血管を、規定時間内にいかに正確に縫い合わせることができるかを競うもので、コロナ禍ということもあり、リモート環境で実施されています。

競技会は
S クラス: 無差別級(医学生~部長・教授)【16名エントリー】
A クラス: 心臓外科修練中(心臓血管外科専門医取得前)【10名エントリー】
B クラス: 外科専門医修練中 【22名エントリー】
C クラス: 医学生(5〜6年)・卒後研修修練中【5名エントリー】
という4つのクラスで行われます。

キャリアに応じてA、B、Cというクラス分けがあるのはなるほどという感じでしたが、キャリアに関係なく医学生から部長・教授まで参加できるSクラスがあるのには驚きました。
1/7の放送では、このSクラスの模様が届けられました。

緻密な技に感嘆!でも最もすごかったのは…

直径2mmの模擬血管を8分という規定時間内に縫い合わせるという微細な作業には驚きの連続でしたが、中でもすごいなと思ったのは、それは、競技中起きたトラブルや失敗への、参加者の冷静な対応です。
ある参加者は、競技中にリモート用のスマートフォンが落下しzoomの接続が切れるという予期せぬトラブルに見舞われましたが、冷静に再接続を行い、無事時間内に吻合を終えました。
またある参加者は、糸が絡まってしまうという自身も初の失敗をしてしまいましたが、冷静にやり直しを選択し、その後の吻合は参加者の中で最も正確で美しいものでした。
競技大会という大事な場面で大きな失敗をしたら、自分なら絶対に慌ててしまうと思います。
冷静に事を進められるということは、単に冷静であるとか度胸があるというだけでなく、失敗してもこうすれば立て直されると見積もることのできる練習と経験をしてきているということで、本当にすごいなと思いました。

もちろん、失敗はない方がよいのですが、どんなに優秀な人でも、どんなに気をつけていても、いつかは必ず失敗します。
自分が手術を任せるなら「絶対に失敗しない」という医師ではなく、失敗しても立て直せる医師に任せたいと感じましたし、これは手術に限らずどんな仕事でも同じだと思います。

失敗を「あってはならないこと」と否定するのではなく

糸が絡まってしまった参加者は、やり直しのため規定時間を大幅に超過し、点数は低くなりましたが、日本冠動脈外科学会の特別賞を受賞していました。
学会理事が「予期せぬ失敗は必ずある。そういう時にやり直しを確実に行い、結果としてベストな治療を患者さんに提供することこそが大切」というようなことを言っていて、本当にそうだなと思いました。
失敗を「あってはならないこと」と否定するのではなく、失敗を前提とした仕組みづくりやトレーニングが重要だと、心から思います。

おまけ

また、この協議会の様子は、TV放送とは別にオンラインで中継され(学会サイトにアーカイブが残っています)、参加者の家族・友人なども見ることができます。
素晴らしい技術を持ち日々活躍している様子を、家族や友人など身近な人に見てもらえるというのは、とても励みになりますし、応援する方も応援しがいが出ると思います。
昨今、従来対面で限られた人しか見られなかったものが、配信により多くの人に共有されるようになったのは、よいことだなと思います。
こういったコンテストはぜひこれからもどんどんやってほしいし、配信してほしいなと思います。

(ライター K.M)

無料相談

pagetop